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ホンダ車のウィンドウに付く
小さな三角のマークとは? 筆者:中村 孝仁

自動車メーカーは日々色々な研究をしており、自動車の運転のし易さ向上に努めています。例えばホンダ。ホンダ車オーナーのなかでも気付いていない方も多いようですが、最近のホンダ車のフロントウィンドウには両端にごく小さな▲(三角)のマークが付けられています。実はこれによって無意識のうちに視線の水平移動が安定的に行え、走行軌跡の安定に繋がるというのです。

この研究は2010年から2011年にかけて、自動車技術会にホンダ技術研究所の由本誠二氏から文献として発表されています。それによりますとホンダは、人が車両を運転する際の走行軌跡と視線行動について考察し、次のような仮説を立てたのだそうです。それは「ドライバーは車両操作時に進むべき前方を見渡して、取得した視界情報を一度バラバラにして自ら再構築して選定している。その結果、運転する車両をコーナーなどに適切に誘導していくことが出来る」というものです。

それを立証するため社内で実験を行い、狭い路地での左折時の視線移動がどのようになっているかを検証しています。その結果フロントウィンドウに小さな▲マークをつけることで、視線の水平移動が安定し、狭路における正確な走行軌跡の獲得に役立つという結果を得たというのです。

実験は社内のテストドライバー6名と、同じく社内のボランティア2名で行われました。即ち運転の習熟度の高い人と、標準的な人を選んでいます。男女別では男性5名、女性3名で、年齢も24歳から46歳と比較的若い人が被験者になりました。そして道幅3mの狭い道で左折する際に車両が上手く通過できるか否かと、その時の視線移動のデータを取りました。▲マークが付いていない状態では視線が上下にぶれて安定しませんが、▲マークをつけるとその上下のブレが少なくなったのです。したがってこの▲マークは、狭い路の左折を安定的に行える助けになった、という結果を得たそうです。

実際に車両を見てみると、その▲マークはフロントウィンドウのかなり上の方についています。しかも車両によっては、定期検査の日付がかかれた丸いステッカーがすぐ横に貼られていたりします。こうした障害物があっても視線移動の助けになるのか、ホンダ広報部に尋ねてみました。すると「点検ステッカーなど視覚的な異物の影響もありますが、このマークはドライバーの無意識に働きかけるものであり、一般的に邪魔だと意識するものであっても影響のない場合もあり、一方で小さくて意識的には気にならなくても影響が出る場合もあります」という回答を頂きました。点検ステッカーのようなものは影響が少ないのでしょうが、良く見られるウィンドウ周辺に飾りをつけるような場合は影響が出るかもしれない…ということでしょうか。

また▲マークはずいぶん上の方についているので、果たして視線の平行移動に効果があるのか尋ねたところ、「(標準的な)ドライバーが着座した場合のアイポイントから、ある角度になるように設定されている」のだそうです。つまり上の方にあるのはそれなりの理由がある、ということです。

こうしたことからホンダは、近年発売するクルマにはこの▲マークを取り付け、特許も申請しています。最近のクルマは車両感覚を掴みにくい、と思っておられる方はこれを利用してみてはいかがでしょうか。ホンダ車オーナー以外の方も、ご自分でフロントウィンドウ両端に目印を貼ることで、視線移動の安定性に効果が期待できます。因みに▲マークの大きさは一辺が5mm程度の小さなもの。ルームミラーより上で気にならない高さに調整しましょう。また左右同じ高さに貼ることが必須です。

この研究は今も継続的に行われているそうですが、こんな小さな▲マークが人間の視線移動に役立っているのは驚きです。ドライバーは多くのケースで自分の勘だけを頼りに運転していますが、こうした小さなマークがその勘を助けているのです。

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