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Column03

ヘッドライトはハイビームが基本、という誤解

2018/07/23

どうも日本では新しい法律の周知が上手くいかないことが多いようです。

2017年3月の改正道路交通法施行により、クルマの走行中のヘッドライトは原則ハイビームが基本となり、前方にクルマがいる場合はすれ違い灯(ロービーム)に切り替えることが明確化されました。

法律上はヘッドライトは原則ハイビームで、ロービームはすれ違い灯です。実は、改正以前の道路交通法でもルールは同様のものでした。ただし、この道路交通法が制定されたのは昭和35年のこと(昭和46年に一部改正)。当時はクルマが少なく、また道路整備もまだまだ整っていなかったため、街灯なども少なく夜間の道路はとても暗かったと思われます。

現在の公道は、高速道路や郊外の一般道以外は街灯も充実して、周囲にクルマもたくさん走っているためにロービームで走っていてもまったく問題ないほど視界は確保されています。それでも改正道路交通法で明文化されたのは、街灯の少ない路上でロービームのまま走行していたクルマが歩行者に気付かず、はねてしまった事故がきっかけだと言われています。

ともあれ改正道路交通法の施行と合わせて警察庁のWebサイトではハイビームの積極使用が推奨され、様々なWebメディア、ブログなどでもハイビームの使用を推奨している記事を見かけます。その影響でしょうか、夜間の道路では交通量の多い地点でも5分から10分に1台以上はハイビームのまま走行しているクルマに遭遇するようになりました。これは法律を遵守していないだけでなく、非常に危険な状態です。原因としては「ハイビームにしていることを忘れている、ハイビーム状態であるのに気付いていない」、「法律でハイビームが基本と知ったから守っている」という間違った認識などが考えられます。

確かに法律上はハイビームが原則なのですが、現実にはよほど郊外で、しかも深夜や早朝でなければ他のクルマを見かけない、ということはないでしょう。であればハイビームにしていられる時間は短くなります。ハイとローのどちらのライトが基準になるかは法律だけで判断するのではなく、頻度で考えるべきではないでしょうか。使用頻度から言えば間違いなくロービームの方が多いのです。

警察庁はハイビームにすることで防げた事故もあると交通事故を分析したデータを根拠にハイビームの使用を推奨していますが、前方にクルマがいてもハイビームにしたまま走行することで生じてしまう問題も無視することはできません。向かい合うヘッドライトの光に挟まれた歩行者などが見えなくなる、蒸発現象が原因と思われる交通事故も発生しています。ハイビームのまますれ違うような状況が増えれば、この種の事故は増えてしまうことも予想されます。

対向車のドライバーを幻惑させて、他の交通や障害物を見えにくくさせてしまったことが分かれば、当然その責任は追及されることになるでしょう。最近はドライブレコーダーで対向車が走行状態を記録していることも多いので、直接の加害者ではなくても事故を誘発したことが証明される可能性は高くなっています。

周囲のクルマとの交通トラブルを避けるためにも、やはりロービームを基本として、前にクルマがいない時だけハイビームを使う習慣をつけることをお勧めします。

対向車や前走車を検知すると、その方向のLEDランプを消灯しドライバーの幻惑を防ぐALH(アダプティブLEDヘッドランプ)の例。画像提供:マツダ

こうしたヘッドライトの操作が煩わしいと思う方は、最新のALH(アダプティブLEDヘッドライト)を搭載したクルマに買い替えるといいでしょう。これはハイビームで走行中に前方に対向車や前走車を検知すると、その方面だけ上向きの配光をカットしてくれるので、ドライバーを幻惑することを防ぎます。同じように対向車や前走車を検知するとハイビームからロービームに切り替えてくれるAHS(オートマチック・ハイビーム・システム)などと呼ばれる機構もありますが、こちらは配光すべてをロービームにしてしまうので、歩道側の視界も大きく低下することになってしまうのが難点です。

そもそもハイビームにしなければ危険だというのは、ロービームでは40m先までしか前方を照らせないため、時速60kmで走行していると障害物に気付いても回避操作が間に合わない、ということが根拠です。しかも夜間は比較的交通量が少なく、スピードが高めになっていることから危険性が高く、対歩行者との接触事故では高齢者の割合が高いことも、判断や運動能力の低下も問題となっていることも見逃せません。

夜間の交通事故を防ぐには、自車の走行速度を把握し、適切な車間距離を空けて走行することにより、周囲の危険に目を配る余裕を作ることが大事です。気付かずに走行速度が上昇し、車間距離も狭くなっていれば前車の動きに注意力が集中し、それ以外の危険に気付くのが遅くなってしまいます。運転中にそうした余裕がないと思う時には、走行速度を落としましょう。自分の能力を超えた速度で走っていることが、事故を誘発する原因の一つなのですから。

クルマの運転は便利なだけでなく、楽しいものでもありますが、走行には様々な危険がつきまといます。リラックスするばかりでなく、常に自車の状態、周囲の交通環境に気を配って運転しなければなりません。運転とは、それだけ責任の重い行為なのです。

今後、運転免許を所有する人口は減少していくばかりです。免許を所有し、キチンと運転ができることが、これまでより価値のある時代になることは間違いないでしょう。

著者:高根 英幸